日々是傾き

歌舞伎、着物、その他いろいろ。傾いたり傾かなかったりな出来事あれこれ。

十二月大歌舞伎 第二部『らくだ』

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第二部は『らくだ』『蘭平物狂』

『らくだ』は昨年の秀山祭九月歌舞伎染五郎×松緑で見て以来。幕見席の前、3階B席最後列は、奇しくも前回と同じ。

さて、今回は、紙屑屋久六に中車、やたけたの熊五郎に愛之助、そして、らくだの宇之介は片岡亀蔵と、期待高まる配役! 「らくだ」は死んだ役なので死体なのですが、死体と言えば亀蔵さん。「銅像と言えばハナ肇」ってのと同じくらいの「ザ・死体」。まさに、はまり役なんです。片岡亀蔵さん。そうでなくても素敵な役者さん。面長の濃いめの顔立ちは、江戸の浮世絵から出てきたみたい。そうそう、少し前ですが、今年1月の国立劇場は新春歌舞伎「通し狂言しらぬい譚」で、ピコ太郎を演じたことで話題になりましたね。→国立劇場の記事

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今月は三部制ということで、第二部は午後3時の開演。2時過ぎの歌舞伎座はこんな感じ。風が冷たいけど、よく晴れてて気持ち良い。寒いから開場と同時に中に入りました。

 

上方落語が原作の『らくだ』は、大阪が舞台。裏長屋の嫌われ者、らくだ(亀蔵)がフグに当たって死んだところから話が始まります。長屋の荒れた部屋に、死んだらくだが寝かされています。らくだを弔ってやろうという兄貴分の熊五郎(愛之助)が、そこにやってきた紙屑屋の久六(中車)を脅して、長屋の家主のところに無心に行かせるのですが・・。
まずは初っ端から中車の演技が光る。世話物、しかも町人の役が似合う。にじみ出るコミカルさが、わざとらしくなく自然で良い。『夏祭浪花鑑』の底意地の悪い爺さんの悪役ぶりも海老蔵を完全に食ってしまうくらい良かったけど、久六のおどおどした感じもまた、舞台に立っているだけで面白くて、ものすごく良い。そして、酒を飲むにつれ、気弱な態度が徐々に大きくなっていく様も、この役をやらせたら天下一品だった勘三郎を彷彿とさせる程の出来栄え。むしろ勘三郎を越えたかもしれない。この人、天才かも。中車の演技に完全に引き込まれました。

対する愛之助は、この演目の名舞台で勘三郎とタッグを組んだ三津五郎と同じく、乱暴者の熊五郎を演じているのですが、ドスの効いた大阪弁が迫力満点で、身体も三津五郎さんよりもガッチリしてるのも相まって、これまた良い感じ。三津五郎とは違った雰囲気の熊五郎が素敵でした。(ちなみに、1階ロビーには奥さまがいらしてて、ノリノリな感じではない、落ち着いた着物姿が素敵でした)

ストーリーは それだけで笑い満載の演目なので、テンポ良く飽きることなく楽しめます。無心を断る家主への腹いせに、死体を担いでカンカンノウを躍らせる、という抱腹絶倒な場面が見どころです。この死体がまた、いい味出していて、それはやはり片岡亀蔵さんならではの、とても上手な動きであったり脱力であったり。今日も客席全体が大笑いして、それが何度もあって、笑いすぎて疲れてしまうくらい。なので、次の演目『蘭平物狂』の前半部分は(ちょっと退屈な展開)寝息が聞こえたり、頭がカックンカックンなってる人がちらほら見えたり、それほど『らくだ』中車×愛之助×亀蔵が名舞台だった、ってことで。

 『蘭平物狂』の後半、大立ち回りは眠気が覚めて、見入ってしまいました♪

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